地上のアスタ

Introduction

 そして、最後の星が消えた。

 導となるものも、願いを託す先も、もうこの空には存在しない。太陽が沈んだ晦冥の夜空に昇るのは今や月のみとなった。これでようやく独壇場だと言わんばかりに煌々と輝く街頭を傍目に、親指でその月を隠しながら、彼は隣で紫煙を燻らせる男に語る。それで良いものか、と。
「人は太古の昔から常に星と共に生きてきた、そうだろう? 孤独に震える夜闇を照らしてきたのは誰だ、人間に季節の概念を教えたのは何者だ、東方の三賢者をベツレヘムに導いたのは何だった。そうさ、答えは星だ。人類が星無くして生きることなどできやしないのさ」
「じゃあお前さんはこのまま死んでしまうのか?」
「まさか。ヒトには神から与えられた知恵と体がある。無いものは創ればいいのさ」
「星を作る? 馬鹿め、まるで神じゃないか」
「ああ、馬鹿で構わない。そうして大馬鹿者の俺たちが、誰もなしえなかったことをなして神になればいい。なあに、不可能なことではないさ。星は全くの未知の存在じゃあないんだぜ、何しろ全部俺たちが知っているモノからしかできてないんだから。……なあ、こんな言葉を知っているか」
 彼は掲げた手を一度開いてみせると、頭上で先程まで隠していた月を今度は握りしめる。男はそれを奇怪なものでも目の当たりにしたかのような形相で見ていたが、それは同時にどこか現実味を帯びた行為のようにも思えていた。"彼"は男の方を向いて、言い放つ。

"――We are made of starstuff".

 それは、太陽を除くすべての恒星が死に、新たな星が生まれなくなった時代。
 地球では、地下マントルから抽出した高圧エネルギーを利用して新たな恒星を生み出し、宙へと放つ《恒星炉》が各地で開拓されていった。ところが、ある日を境に空から突如として降り立った未確認生物《星喰(ホシバミ)》により、生み出した星々は喰らわれ恒星炉もろとも消滅していく。
 恒星炉産業推進協会は対策本部を設立し、残された最古にして最大の第一恒星炉にて、等身大の人形の体内にかつて空で星座を構成していた星々の模造品を組み込むことで、自我を持つオートマタ・対星喰用戦闘兵器《G.D》を作った。
 時は流れ凡そ数百年後。ブリテンを拠点に活動する星喰討伐部隊《黄道十二宮》は御国の平和を守るため、今日も今日とて星喰を殲滅するため戦線に駆り出されるのである。

Character

Coming soon...

Contents

第一章 黄道十二宮隊長、アリエス・ベルム・べラム

 生まれたばかりのG.D「リブラ・リブロ」は、黄道十二宮隊長のアリエス・ベルム・べラムに出会う。新人G.Dの成長物語。

第二章 リヴラ・リヴロ

 それはリブラはおろか一期生すら生まれる前、アリエスがまだ隊長で無かった頃の話。彼には親友がいた。

第三章 我が名はリブラ

 真実を知ったからには、為さねばならぬ。

Illust

 過去の落書きなどが見られます。リンク先は外部サイトです。

  • vol.0 p.32から初期の落書きが見られます。